基本的な考え方
当社は、気候変動への対応を経営における重要課題の一つと位置づけています。TCFD(※) が推奨する取り組みを推進するとともに、4つの中核的要素「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の情報開示に努めています。
※ Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)の略。気候変動が金融市場に重大な影響をもたらすとの認識が主要国の間で広がったことを背景に、各国の中央銀行・金融当局や国際機関が参加する金融安定理事会(Financial Stability Board、FSB)によって2015年に設立された。2017年に公表されたTCFD提言によって、企業などに対して気候関連の情報開示を推奨するとともに、気候変動関連の情報開示の枠組みを提示している。
ガバナンス
代表取締役社長CEOを委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しています。同委員会は取締役会からの委任を受け、気候変動を含むサステナビリティ課題に関する方針立案と進捗管理を行います。重要な事項については、取締役会に報告され、審議を行います。2023年7月には、サステナビリティ委員会での検討を経て、気候変動の観点も含むマテリアリティを特定し、取締役会において承認しました。
戦略
シナリオ分析
目的
気候変動によるリスクおよび機会を認識し、現在の対策を検証することで、将来の事業戦略へと活かすことを目的に、シナリオ分析を実施しました。 分析の初年度となる2022年は、TCFDのフレームワークに沿い、気候変動に伴う移行リスクとし物理的リスクを定性的に分析、それぞれの影響度を大・中・小の3段階で評価しました。 分析においては、+1.5~2℃および+4℃のシナリオを採用し、異なる気象条件・社会環境における事業活動を検討することで、さまざまな環境下においても持続的な経営を可能にすることを目指しています。
対象範囲
株式会社コアコンセプト・テクノロジー
対象期間
現在~2050年
シナリオの定義
分析においては、IEAやIPCCなどの情報を参考にし、以下の2つのシナリオを想定しました。
気温上昇が4℃程度となるシナリオでは、現状の政策が延長されることで規制などの移行リスクの影響は小さいものの、自然災害の悪化が進行し、異常気象などの物理的リスクが高まると推測しています。 気温上昇が1.5~2℃となる世界では、GHG排出規制など気候関連の政策が強化されることで移行リスクの影響が大きくなるものの、その効果として+4℃と比較して物理的リスクは限定的になると推測しています。
+1.5~2℃シナリオ | +4℃シナリオ | ||
政策 | 炭素税が導入される。各種気候変動対策が導入される | 炭素税が導入されない。各種気候変動対策が導入されない | |
電気 | 電力価格は上昇 | 電力価格は低下 | |
原油 | 原油価格は低下 | 原油価格は上昇 | |
消費者意識 | 気温上昇により、気候変動など環境課題に対する意識が向上するとともに、 サステナブルなライフスタイルが定着 | 気温上昇により、気候変動など環境課題に対する意識が向上 | |
気候 | 大雨や台風が増加 気温が2℃上昇 | 大雨や台風が増加(+2℃の世界よりも発生頻度が高い) 気温が4℃上昇 |
重要なリスクと機会
+1.5~2℃、+4℃の世界ともに、環境に関連するシステムの需要が高まると予想されます。当社にとってはこうしたシステムの受注機会を増加させる要因となると捉えるとともに、気候変動の抑制およびそれに起因する問題の解決にもつながると考えています。 なお、これらの世界では炭素税の導入や電力価格などの変動が予想されますが、当社事業は電力を多量に使用するものではなく、財務面へのマイナスの影響は限定的なもの考えています。
重要なリスク
重要なリスク | 分類 | 影響度 | 事業へのインパクト | |
気候変動に関する評価が低いことによる顧客ロイヤルティ低下のリスク | 評判 | 顧客ロイヤルティ | 中 | 提供システムの環境貢献性(低GHG排出やグリーンイノベーションへの貢献など)が訴求できていない場合、顧客からの評価が下がり、取引機会が減少する |
気候変動に関する評価が低いことによって人材確保が困難になるリスク | 人材採用 | 中 | 提供システムの環境貢献性(低GHG排出やグリーンイノベーションへの貢献など)が訴求できていない場合、就職希望者が減り、人材確保が困難になる | |
気候変動に関する評価が低いことによる投資鈍化のリスク | 投資家ロイヤルティ | 中 | 提供システムの環境貢献性(低GHG排出やグリーンイノベーションへの貢献など)が訴求できていない場合、投資家からの評価が下がり、株価が下落する |
重要な機会
重要な機会 | 分類 | 影響度 | 事業へのインパクト | |
GHG排出量計測システムの需要増加 | 政策・規制 | 炭素価格 | 中 | 炭素税導入により、GHG排出量計測ニーズが高まり、関連するシステムの需要が増加する(+4℃の世界では影響なし) |
化石燃料費の高騰による物流関連システムの需要の増加 | 化石燃料補助金 | 大 | 化石燃料補助金の解除や減額が起因となり化石燃料費が高騰。それにより、燃料の多様化や物流網の再構築などが活発化し、関連するシステムの需要が増加する | |
低炭素関連市場の伸長や新技術普及によるシステム需要の増加 | 技術 | 低炭素・次世代技術の普及 | 大 | 低炭素化関連、特に蓄電やモーター関連市場の伸長により、スマートファクトリーなどの建設が活発化。それにより、関連するシステムの需要が増加する |
顧客先において仕入コストが増加。サプライチェーンや価格管理システムの需要が増加 | 業界・市場 | 原材料コストの増減 | 大 | 顧客先において原材料費が増加。仕入コストやサプライチェーンの把握や仕入価格算出システムの需要が増加する |
リスク管理
当社では、リスクの把握と適切な対応により損失の最小限化を図るために、代表取締役社長CEOをリスク管理最高責任者に任命しています。また、常勤役員及び各部門の責任者からなるリスク管理委員会を設置し、四半期ごとに開催。事業環境や組織体制など、当社経営に関するリスク全般について把握し対応策を検討しています。気候変動関連のリスクについても、こうした体制のもとでリスクの特定・評価を行い、低減に向けた対策を立案・実行しています。
指標と目標
当社は、Scope1、2のGHG排出量を把握し、削減に取り組んでいます。2022年度の主なGHG排出量の削減は、当社が本社を構えているオフィスビル「ダイヤゲート池袋」が、2022年4月から太陽光発電によりGHG排出量実質ゼロを実現したことが影響しています。その他の拠点においてもGHG排出量を把握し、削減に努めています。2023年中には、Scope1、2の排出量削減目標の設定を予定しています。また、当社の事業活動ではScope3の割合が非常に大きくなると予想して います。Scope3についても、排出量の把握と削減目標の設定に取り組んでいきます。
GHG排出量実績(単体)
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | ||
Scope1,2排出量 (kg) | 50,739 | 81,527 | 79,943 | 80,255 | 29,327 | |
従業員数(名) (※1) | 126 | 169 | 204 | 240 | 286 | |
一人当たり排出量(kg) | 402 | 482 | 391 | 334 | 102 | |
排出量(t-CO2)当たりの売上高(百万円) | 66.44 | 58.46 | 69.22 | 97.20 | 413.03 | |
排出量(t-CO2)当たりの営業利益(百万円) | 2.62 | 2.02 | 2.25 | 6.80 | 38.19 |
※ 1月~12月までに在籍していた社員数の平均数値です。